「母性本能が強い女性」
「母性本能をくすぐる男性」
「彼を見ると母性本能が働く」
恋愛の話をしていると、「母性本能」という言葉は当たり前のように出てきます。
泣いている人を見ると放っておけない。
好きな男性が疲れていると何かしてあげたくなる。
普段はしっかりしている男性が弱音を吐くと、急にかわいく見える。
そんな気持ちを、
「母性本能なんじゃない?」
と説明することがあります。
私自身、この言葉を何となくわかったつもりで使ってきました。
ところが、あらためて考えると不思議です。
子どもに対して感じる「守りたい」という気持ちと、恋愛相手に感じる「放っておけない」は、本当に同じものなのでしょうか。
さらに、
「女性には母性本能がある」
とよく言われます。
では、すべての女性に生まれつき母性本能が備わっているのでしょうか。
最初に答えると、それほど単純ではありません。
人間の養育行動には身体的・生物学的な仕組みが関係しますが、それだけでなく、経験や環境、相手との関係など、さまざまなものが関わります。
そして恋愛で私たちが「母性本能」と呼んでいるものの中には、
守りたい、世話をしたい、かわいい、必要とされたい、安心させたい、弱いところを見せてほしい、そばにいたい。
いくつもの感情が混ざっている可能性があります。
つまり「母性本能」という一言で片づけるには、少し大きすぎる言葉なのです。
このシリーズでは、その中身を15の記事に分けて考えていきます。
まず第1部では、そもそも母性本能とは何なのか。
ここから始めます。
「母性本能」を15の角度から考えるシリーズです
「母性本能」という言葉はよく使われますが、恋愛の中で感じる「守ってあげたい」「放っておけない」「必要とされたい」という気持ちは、本当にすべて母性なのでしょうか。
このシリーズでは、女性側の心理・男性が女性に求める安心・母性本能とSEXの3つの視点から、全15部で考えていきます。
この記事は第1部です。
第2部以降では、「放っておけない男性に惹かれる理由」「守ってあげたい気持ちは恋なのか」「母性と恋愛依存」「男性が女性に求める安心」、そして後半では「母性本能と性欲・SEX」まで順番に掘り下げていきます。
※第2部以降は順次公開します。
「母性本能」という言葉から、どんなものを想像するだろう
母性本能と聞いて、まず赤ちゃんを抱く母親を思い浮かべる人は多いでしょう。
泣けばあやす。
危険があれば守る。
お腹が空いていれば食べさせる。
体調が悪ければ心配する。
確かに、こうした養育に関わる行動はあります。
ただ、人間の場合、それを単純に、
「女性には子どもを守る本能がプログラムされている」
と説明してしまうと、現実とうまく合わなくなります。
日本心理学会でも、母親の養育行動について、妊娠・出産に伴うホルモンだけではなく、子どもとの接触や養育経験なども関係することが紹介されています。
つまり、
女性だから自動的に同じ母性が現れる。
子どもを産めば誰でも同じ感情になる。
というわけではありません。
ここは最初に押さえておきたいところです。
母性は「ある・ない」で採点するものではない
「私は子どもがそれほど好きではないから、母性がないのかもしれない」
そう感じる女性もいるでしょう。
反対に、
動物を見ると放っておけない。
困っている人を見ると助けたくなる。
恋人の世話を焼いてしまう。
そんな自分を、
「母性が強いのかな」
と思う人もいます。
でも、この二人を単純に、
母性がない人。
母性がある人。
と分ける必要はないと思います。
そもそも人間の「誰かをケアする」という行動は、スイッチのようにONかOFFかで決まるものではありません。
相手によっても変わります。
状況によっても変わる。
自分に余裕があるかどうかでも違うでしょう。
疲れ切っている日に、
「もっと人を慈しみましょう」
と言われても、
「今日は自分を慈しませてください」
という日だってあります(笑)。
それを「母性がない」と考える必要はありません。
ホルモンだけで「母性」を説明できるのか
母性の話になると、よく登場するのがオキシトシンです。
「愛情ホルモン」
「幸せホルモン」
と呼ばれることもあります。
ただ、この呼び方だけを覚えてしまうと少し誤解が生まれます。
オキシトシンは出産や授乳に関係するだけではなく、社会的な認知や人との結びつきに関わる研究でも扱われている物質です。日本心理学会の解説でも、母子関係や社会的な絆との関係が紹介されています。
一方で、
「オキシトシンが出た=愛情が生まれた」
「オキシトシンが多い=母性が強い」
と単純な数式のように考えることはできません。
人間の感情はもう少し面倒です。
そして、その面倒さが恋愛になるとさらに増えます。
では、恋愛でいう「母性本能」とは何なのか
ここからがKOKOROで考えたい部分です。
たとえば、付き合っている男性が仕事で落ち込んでいたとします。
普段は強がっている人なのに、
「今日はちょっと疲れた」
と弱音を吐いた。
その瞬間、
「大丈夫?」
と抱きしめたくなる。
何か食べさせてあげたい。
話を聞いてあげたい。
今日はそばにいてあげようかなと思う。
こういう気持ちを私たちは、
「母性本能がくすぐられた」
と表現します。
でも、本当に母性なのでしょうか。
そこには、
好きだから心配している。
弱い姿を見せてくれたことが嬉しい。
自分を頼ってくれたことが嬉しい。
相手を安心させたい。
必要とされたい。
もっと親密になりたい。
いろいろな感情が混ざっているはずです。
それを全部まとめて、
「はい、母性本能です」
としてしまうと、大事なところが見えなくなります。
なぜ「しっかりした男性の弱さ」に心が動くのか
恋愛系の記事で「母性本能をくすぐる男性」を調べると、
少し抜けている。
甘え上手。
弱いところを見せる。
無邪気。
普段とのギャップがある。
こういった特徴がよく挙げられています。
確かに想像できます。
いつも、
「大丈夫、大丈夫」
と言っている男性が、二人になったときだけ、
「実は結構きつかったんだよね」
と話す。
そこで急に心の距離が縮まる。
ただ、これは単に「女性の母性本能が発動した」と考えるより、
自分にだけ弱い部分を見せてくれた
ことが大きいのではないでしょうか。
人は、相手から心を開かれると、自分もその人を近く感じることがあります。
つまり、
「守ってあげたい」
という感情の中には、
「この人にとって特別な存在でいたい」
という恋愛感情が混ざっていることもあるわけです。
ここは、第2部で詳しく掘り下げます。
「かわいい」と「好き」も同じではない
これも恋愛ではややこしいところです。
男性の寝顔を見て、
「かわいいな」
と思う。
失敗して落ち込んでいる姿を見て、
「しょうがないなあ」
と思う。
食事をおいしそうに食べているのを見て、
もっと食べさせたくなる。
これを母性本能と呼ぶことがあります。
でも、
かわいい。
世話をしたい。
守りたい。
恋愛として好き。
性的に惹かれる。
これらは必ずしも同じ感情ではありません。
そして人間は、困ったことに一人の相手に複数を同時に感じることがあります。
「かわいい」と思っている。
「守りたい」とも思う。
でも同時に、
異性として触れたい。
SEXしたい。
そんなこともあります。
母親のような気持ちなら性的な感情は生まれないはずだ、と考えると矛盾して見えます。
でも、そもそも私たちが「母性本能」と呼んでいるものが、本当の親子間の母性とまったく同じとは限りません。
ここが今回の15部作で、かなり面白いところになってきます。
「世話をしたい」と「必要とされたい」は少し違う
もう一つ、分けておきたい感情があります。
誰かのために何かをしてあげたい。
これは自然な愛情でしょう。
ところが、
「私がいなければこの人はダメ」
になると、少し話が変わってきます。
相手が困っている。
助ける。
相手から感謝される。
「君がいないと困る」と言われる。
嬉しい。
また助ける。
そして、いつの間にか、
相手から必要とされることが、自分の価値を確認する方法になっていく。
こうなることがあります。
本人は、
「私は母性本能が強いから」
と思っているかもしれません。
でも、その中に、
必要とされたい。
捨てられたくない。
自分の居場所が欲しい。
という気持ちが混ざっている可能性もあります。
これは悪いことだと言いたいわけではありません。
人は誰だって、好きな人から必要とされれば嬉しいでしょう。
ただ、
「してあげたい」
と
「してあげなければ自分には価値がない」
では、かなり違います。
この違いは、シリーズ後半の恋愛依存にもつながってきます。
男性にも「守りたい」「世話をしたい」はある
母性本能という言葉には、どうしても「女性のもの」という印象があります。
でも、
弱っている恋人を守りたい。
体調が悪ければ看病したい。
悲しんでいれば抱きしめたい。
安心させたい。
こうした気持ちは男性にもあります。
では男性の場合は父性本能なのでしょうか。
女性なら母性本能?
そう分類してしまうと、少し不思議です。
実際、人間の養育やケアに関する行動を「女性だけのもの」として考える必要はありません。
むしろ恋愛を考えるなら、
「母性本能」という言葉より、「大切な相手をケアしたくなる気持ち」と考えたほうが理解しやすい場面もある。
私はそう思っています。
それでも「母性本能」という言葉がこれほど恋愛で使われるのは、やはり興味深いところです。
男性は女性に「母性」を求めているのか
ここで今度は男性側から考えてみます。
男性が恋人について、
「一緒にいると落ち着く」
「この人には弱音を吐ける」
「何も話さなくても楽」
と言うことがあります。
これを、
「男はいくつになっても母親を求めている」
と説明することがあります。
でも、これも少し乱暴です。
恋人に安心を求めることと、母親代わりを求めることは同じではありません。
誰だって、好きな人の前では安心したいでしょう。
男性にも、
外では見せない弱さがあります。
仕事。
責任。
お金。
将来。
人間関係。
普段はそれを隠していても、好きな女性の前では少し力を抜きたい。
それを「母性を求めている」と呼ぶこともできますが、
安心して弱い自分を見せられる相手を求めている
と考えることもできます。
この男性側の心理については、第6部からかなり深く扱っていきます。
母性本能とSEXは関係するのか
そして、このシリーズで避けずに考えたいのがここです。
母性本能とSEX。
一見すると、ずいぶん離れた話に見えます。
母性は「守る」。
SEXは「性的に求める」。
ところが実際の恋愛では、そう簡単に分かれていません。
好きな男性を、
かわいいと思う。
守りたいと思う。
抱きしめたいと思う。
そして、
性的にも触れたいと思う。
同じ人に全部感じることがあります。
反対に、
安心する。
大切。
ずっと一緒にいたい。
でも性的には求めない。
そんな関係もあります。
では、
「守ってあげたい」と「SEXしたい」は、どこでつながり、どこで別れるのでしょうか。
これは非常に面白い問題です。
ただ、ここで簡単に、
「オキシトシンが出るからです」
などと説明して終わらせるつもりはありません。
人間の性欲には、身体の反応だけではなく、相手との関係、性的魅力、安心、愛着、過去の経験など多くのものが関係します。
シリーズ第11部以降では、この部分を真正面から扱います。
「母性本能」という言葉を捨てる必要もない
ここまで読んで、
「では母性本能という言葉は間違っているの?」
と思った人もいるかもしれません。
私は、そこまで考える必要はないと思います。
日常語として、
「母性本能をくすぐられた」
と言えば、何となく伝わります。
かわいい。
守りたい。
放っておけない。
世話を焼きたい。
そんな感覚ですよね。
便利な言葉です。
ただ、
その言葉の中に何が入っているのかを、ときどき考えてみる。
それは意味があると思います。
なぜ私はこの人を放っておけないのだろう。
本当に好きだから?
弱いところがかわいいから?
必要とされるのが嬉しいから?
一人にしたら心配だから?
それとも、
この人を助けていると、自分の存在価値を感じられるから?
同じ「母性本能」でも、答えは人によって違うでしょう。
そして、その答えによって恋愛の形も変わってきます。
まとめ|母性本能は一つの感情ではない
「母性本能とは何なのか」
この問いに、
「女性が生まれつき持っている、子どもや弱いものを守る本能です」
と答えれば簡単です。
でも、人間はそれほど簡単ではありません。
身体的な仕組み。
経験。
環境。
相手との関係。
愛着。
恋愛感情。
必要とされたい気持ち。
いろいろなものが重なっています。
そして恋愛で私たちが「母性本能」と呼んでいるものには、
守りたい。
かわいい。
世話をしたい。
安心させたい。
弱いところを見せてほしい。
必要とされたい。
抱きしめたい。
そんな気持ちが混ざっていることがあります。
だから、このシリーズでは、
「女性には母性本能があります」
で終わらせません。
むしろ、
恋愛で私たちが「母性本能」と呼んでいる感情の正体は何なのか。
これを一つずつ見ていきたいと思います。
そして最終的には、
母性。
恋愛。
性欲。
SEX。
依存。
愛情。
一見別々に見えるものが、人と人との関係の中でどう重なっているのか。
そこまで考えてみます。
次は、
「母性本能をくすぐる男性とは?|なぜ『放っておけない男』に惹かれるのか」
です。
なぜ、何でも一人でできる完璧な男性より、少し不器用だったり、弱いところを見せたりする男性が気になってしまうことがあるのか。
「かわいい男」の特徴を並べるだけではなく、そのとき女性の心の中で何が起きているのかを掘り下げます。
運営者のメッセージ
今回、「母性本能」というテーマを考え始めて、私自身も最初に思っていたよりずっと大きな話だと感じました。
最初は、
「女性が男性をかわいいと思う心理」
くらいの話になるのかなと思っていたんです。
ところが掘っていくと、
なぜ人は誰かを守りたくなるのか。
なぜ必要とされると嬉しいのか。
なぜ弱いところを見せてくれた人を特別に感じるのか。
そして、なぜその相手を性的にも求めることがあるのか。
全部つながってきます。
61歳になって思うのですが、人を好きになる気持ちは、きれいに分類できません。
恋愛50%。
母性20%。
性欲20%。
寂しさ10%。
そんな円グラフが頭の上に出てくれれば楽なのですが(笑)。
実際には、自分でもよくわからないまま誰かを心配したり、触れたいと思ったり、離れたくないと思ったりします。
だからこそ、このシリーズでは「それは母性です」と簡単に答えを出すのではなく、
その気持ちの中には、いったい何があるのだろう。
そこを15の記事を使って考えてみたいと思います。
第1部は、その入口です。
母性本能シリーズ
母性本能シリーズ|女性側から考える 第1〜5部
第1部|母性本能とは何なのか|女性には本当に生まれつき備わっているのか
第2部|母性本能をくすぐる男性とは?|なぜ「放っておけない男」に惹かれるのか
第3部|「守ってあげたい」は恋愛感情なのか|母性本能と「好き」の違い
第4部|なぜダメな男性ほど放っておけないのか|母性本能と恋愛依存の境界線
第5部|母性本能が強い女性は恋愛で幸せになれるのか|世話をする愛と尽くしすぎる愛の違い
男性が女性に求める母性と安心|第6〜10部
男性が女性に求める母性と安心|第6〜10部
第6部|男性はなぜ「母親のような女性」に惹かれることがあるのか|恋愛と安心感の正体
第7部|男性は好きな女性に甘えたいのか|外では強い男が恋人の前で弱くなる理由
第8部|男性が女性に「癒やされたい」と思うのはなぜか|恋愛で求める安心と母性
第9部|彼女を母親代わりにしてしまう男性|甘える恋愛と依存する恋愛の違い
第10部では、「安心する女性」と「恋する女性」は同じなのかを考えます。
