「一緒にいると落ち着くんだよね」
男性が女性について、こんなことを言うことがあります。
美人だから。
スタイルがいいから。
話がおもしろいから。
もちろん、そういう魅力もあるでしょう。
でも、長く付き合いたい女性について聞くと、
「なんか落ち着く」
「無理しなくていい」
「この人の前だと素でいられる」
そんな言葉が出てくることがあります。
そして、その女性が面倒見のいいタイプだったりすると、
「結局、男は母親みたいな女性が好きなんじゃない?」
なんて言われます。
では、本当にそうなのでしょうか。
男性は恋人の中に「母親」を探しているのでしょうか。
最初に答えると、
男性が女性に安心感を求めることと、母親代わりを求めることは同じではありません。
男性だって、大人になれば社会の中でいろいろな役割を背負います。
強く見せる。
弱音を吐かない。
仕事では結果を出す。
家族を守る。
人に迷惑をかけない。
そんな力が入りっぱなしの状態から少し降りられる相手。
その女性の前では、
「今日は疲れた」
と言える。
うまくいかなかった話もできる。
黙っていても気まずくない。
男性が「母親みたいで落ち着く」と感じているものの中には、実はこうした心理的な安全が含まれているのではないでしょうか。
※この記事は「母性本能シリーズ」全15部の第6部です。
**第1部「母性本能とは何なのか|女性には本当に生まれつき備わっているのか」**では、恋愛の中で私たちが「母性本能」と呼んでいる感情の正体から考えています。第1〜5部では女性側から母性を考えてきましたが、第6部からは視点を男性側へ移します。
【第1部】母性本能とは何なのか|女性には本当に生まれつき備わっているのか
「母親みたいな女性が好き」と聞くと、ちょっと複雑になる
女性からすれば、
「あなたといると母親みたいで安心する」
と言われても、素直に喜べないかもしれません。
「私は恋人じゃないの?」
と思いますよね。
ましてや、
「お母さんみたい」
なんて言われたら、
褒められているのか微妙です(笑)。
でも男性が感じている「母親みたい」は、必ずしも文字どおり母親そのものを意味しているわけではないと思います。
話を否定せずに聞いてくれる。
失敗してもすぐ責めない。
ちょっと弱いところを見せても態度が変わらない。
無理に格好をつけなくてもいい。
こうした感覚をうまく言葉にできず、
「母親みたいに安心する」
と表現している場合があります。
つまり男性が求めているのは、
「母親」という人物より、「安心して力を抜ける関係」
なのかもしれません。
男性は意外と「弱さを見せる場所」が少ない
もちろん男性にも個人差があります。
何でも友人に話せる男性もいます。
家族に相談できる人もいるでしょう。
ただ、男性同士の会話では、
仕事。
趣味。
車。
スポーツ。
ゲーム。
女性の話。
そんな話はいくらでもできるのに、
「最近、自信がないんだ」
「将来がちょっと怖い」
「仕事で失敗して、かなりへこんでいる」
となると、急に話しにくくなる人もいます。
私自身、男同士で集まって、
「最近、心が不安定でさ」
なんて話を何時間もした経験は、あまりありません。
もちろん、そういう話ができる男性もいます。
ただ、弱さを言葉にすることに慣れていない男性は少なくないでしょう。
そんな男性が恋人の前で、
「今日はダメだった」
と言える。
それだけで、その女性はかなり特別な存在になります。
男性が求める安心は「何でもしてくれること」ではない
ここは女性編との接続で、とても重要です。
男性が安心する女性というと、
料理してくれる。
洗濯してくれる。
部屋を片づけてくれる。
忘れ物を教えてくれる。
朝起こしてくれる。
そんな女性を想像するかもしれません。
確かに、それをありがたいと思う男性はいるでしょう。
でも、それは「生活が楽になる」という話です。
心理的に安心することとは少し違います。
何もしてくれなくても、
自分の話を笑わずに聞いてくれる。
失敗を話しても、
「そんなこともあるよ」
と言ってくれる。
沈黙していても、何か話さなければと焦らなくていい。
そういう相手といると、人は力を抜けます。
男性が恋愛で求める「母性的な安心感」の中心は、家事能力ではなく、
「この人の前では防御しなくてもいい」
という感覚なのだと思います。
男性が好きな女性の前でだけ弱さを見せたり、甘えたりする心理については、**第7部「男性は好きな女性に甘えたいのか|外では強い男が恋人の前で弱くなる理由」**で詳しく考えています。
第7部|男性は好きな女性に甘えたいのか|外では強い男が恋人の前で弱くなる理由
外では強い男性ほど、家では力を抜きたくなることがある
仕事では責任ある立場にいる。
部下がいる。
判断を求められる。
取引先には弱気な顔を見せられない。
家族からも頼られている。
そんな男性が家に帰って、
ソファに座った瞬間、
「疲れた……」
となる。
別に珍しいことではありません。
一日中鎧を着ていれば、どこかで脱ぎたくなります。
恋人の前で甘える男性を見ると、
「外ではあんなにしっかりしているのに」
と思うことがあります。
でも、むしろ逆なのかもしれません。
外で頑張っているからこそ、安全な場所では力を抜く。
それは幼児化したというより、
「ここでは警戒しなくていい」
と感じている可能性があります。
「この人には格好悪いところを見せられる」は大きい
恋愛の始まりでは、誰でも少し格好をつけます。
男性なら、
頼れるところを見せたい。
仕事ができるように見られたい。
余裕のある男だと思われたい。
女性の前で失敗したくない。
そんな気持ちもあるでしょう。
デートの最初から、
「実は昨日、上司に怒られてトイレで落ち込んでました」
なんて話をする男性は、それほど多くないと思います(笑)。
ところが関係が深くなると、少しずつ格好悪い部分も見えてきます。
失敗。
弱音。
嫉妬。
不安。
自信のなさ。
くだらない癖。
それを見せても、相手が離れなかった。
この経験は大きい。
「完璧じゃない自分でも、この人はそばにいる」
という感覚が生まれるからです。
これが安心につながります。
安心できる女性といると「男らしくしなければ」が弱くなる
「男なんだから」
この言葉は、以前より聞かなくなりました。
それでも男性の中には、
強くなければ。
頼られる側でなければ。
弱音を吐いてはいけない。
泣いてはいけない。
そんな感覚が残っていることがあります。
誰かから直接言われなくても、自分で自分に言っている。
これは結構疲れます。
恋人の前でだけ、
「怖い」
「自信ない」
「どうしよう」
と言える。
それを聞いた女性が、
「大丈夫、大丈夫」
と全部解決してくれなくてもいい。
ただ、
「そっか」
と聞いてくれる。
男性にとっては、それだけで楽になることがあります。
では男性は「母親のように何でも許す女性」が好きなのか
ここで勘違いしやすいところがあります。
安心させてくれる女性。
否定しない女性。
弱さを受け止めてくれる女性。
これを、
「何をしても許してくれる女性」
と考えてしまうことです。
これは違います。
約束を破っても許す。
浮気しても許す。
働かなくても世話をする。
暴言を吐いても受け止める。
お金の問題まで何とかする。
それは安心感とは別の話です。
第4部、第5部で見てきた「尽くしすぎる関係」に近づいてしまいます。
本当の意味で安心できる相手は、
何でも許す人ではありません。
「それは違うと思うよ」
と言える。
でも人格までは否定しない。
この違いは大きいと思います。
男性は「叱ってくれる女性」に安心することもある
少しおもしろいのはここです。
男性は必ずしも、
何でも「いいよ、いいよ」
と言ってくれる女性だけに安心するわけではありません。
ときには、
「それはあなたが悪いよ」
と言われても、その女性を信頼することがあります。
なぜでしょう。
たぶん、
自分を否定しているのではなく、行動について話している
と感じられるからです。
「あなたはダメな人」
ではなく、
「今回のそれはよくなかったんじゃない?」
なら受け止められる。
安心とは、
何をしても肯定されることではありません。
本音を言っても、関係そのものを壊されないこと。
こちらのほうが近いのではないでしょうか。
「母親みたいで安心する」と「母親代わりにする」は違う
ここは線を引いておきたいところです。
恋人といると安心する。
甘えられる。
弱音を吐ける。
たまには世話を焼いてもらう。
これは普通にあり得る関係です。
でも、
身の回りのことを全部やってもらう。
自分の感情まで彼女に処理してもらう。
問題が起きれば彼女に解決してもらう。
機嫌が悪ければ彼女になだめてもらう。
自分で決めるべきことまで彼女に任せる。
ここまで行くと、
恋人に安心を求めているというより、
生活と感情の管理者を求めている
状態に近くなります。
この違いは、第9部の
「彼女を母親代わりにしてしまう男性」
で、もう少し深く扱います。
恋愛には「ドキドキ」と「安心」が両方ある
若いころの恋愛を思い出すと、
ドキドキ。
会いたい。
触れたい。
嫌われたくない。
LINE……昔なら電話ですが(笑)。
返事が来ない。
落ち着かない。
そんな感情が強かったように思います。
恋愛というと、この「興奮」の部分が目立ちます。
でも長く一緒にいる関係では、
ドキドキだけでは疲れてしまいます。
会うたびに心拍数が上がりっぱなしでは、体がもちません。
年齢を重ねると、
「一緒にいて楽」
「黙っていても平気」
「変なことを言っても笑ってくれる」
そんな相手の価値が、だんだん大きくなる気がします。
恋愛の魅力は、
刺激だけではありません。
安心できることも、立派な魅力です。
安心すると恋愛感情がなくなるのか
ここで、
「安心しすぎると男女ではなくなる」
という話もあります。
確かに、二人の関係が生活だけになり、恋愛的な刺激が減ることはあります。
でも、
安心=恋愛終了
ではありません。
安心できる。
そのうえで、
女性として魅力を感じる。
触れたいと思う。
抱きしめたいと思う。
一緒に出かけたい。
SEXしたい。
そういう感情は共存できます。
むしろ、
安心できるからこそ身体的な距離を縮められる人もいます。
このあたりは、後半の「母性本能とSEX」の5本にもつながってきます。
男性が安心する女性は「母性的」なのか
ここまで考えると、
「母性的な女性」
という言葉自体が、かなり広いことがわかります。
料理が上手。
世話好き。
優しい。
包容力がある。
話を聞く。
弱さを受け止める。
穏やか。
これらを全部まとめて、
「母性がある」
と呼んでしまうことがあります。
でも男性が恋愛で強く惹かれるのは、
必ずしも「世話をしてくれる女性」ではありません。
むしろ、
「自分が自分のままでいても大丈夫だと思わせてくれる女性」
なのかもしれません。
これは母性というより、
二人の間に生まれる安心感です。
女性側から見た「世話をする愛」と「尽くしすぎる愛」の違いについては、**第5部「母性本能が強い女性は恋愛で幸せになれるのか」**で詳しく考えています。
第5部|母性本能が強い女性は恋愛で幸せになれるのか|世話をする愛と尽くしすぎる愛
男性が女性に安心を求めることは悪いことではない
男性が女性に甘える。
安心を求める。
弱さを見せる。
それを、
「情けない」
「マザコン」
と決めつける必要はないと思います。
誰にでも、
安心できる場所は必要です。
男性だから必要ない、ということはありません。
ただし、
安心させてもらうだけではなく、
自分も相手を安心させられるか。
ここは大切です。
彼女が弱ったとき、
話を聞けるか。
彼女が疲れていたら、
「今日は俺がやるよ」
と言えるか。
彼女が不安になったとき、
そばにいられるか。
自分だけが甘えるのではなく、
相手にも甘えてもらえる。
それなら、
「母親のような女性を求めている」のではなく、
お互いに安心できる恋愛を作っている
と言えるのではないでしょうか。
まとめ|男性が惹かれるのは「母親」ではなく、安心できる場所なのかもしれない
男性はなぜ「母親のような女性」に惹かれることがあるのでしょう。
世話をしてくれるから。
優しいから。
自分を受け入れてくれるから。
弱いところを見せられるから。
いろいろな理由があるでしょう。
でも、その奥にあるものを見ていくと、
「この人の前では、ずっと強い男でいなくてもいい」
という感覚があるのかもしれません。
それは必ずしも、母親を求めているということではありません。
大人になっても人は、
安心したい。
受け止めてもらいたい。
弱い自分も知っていてほしい。
そう思うことがあります。
恋愛の相手が、その場所になることもある。
ただし、
彼女を「何でもしてくれる人」にしてしまったら話は別です。
安心とは、依存することではありません。
一人でも立てる二人が、ときどき相手に寄りかかれること。
私は、そのくらいがちょうどいいように思います。
そして次の第7部では、もう一歩踏み込みます。
第7部|男性は好きな女性に甘えたいのか|外では強い男が恋人の前で弱くなる理由
なぜ、外ではしっかりしている男性が、好きな女性の前では急に子どものように甘えることがあるのか。
そして女性は、その「甘え」をどこまで受け止めればいいのか。
次は男性の**「甘えたい気持ち」そのもの**を見ていきます。
母性本能シリーズ
第5部|母性本能が強い女性は恋愛で幸せになれるのか|世話をする愛と尽くしすぎる愛
シリーズを最初から読む|第1部「母性本能とは何なのか」
第7部では、男性は好きな女性に甘えたいのか。外では強い男性が、恋人の前で弱さを見せる理由を考えていきます。
※第7部は近日公開します。
運営者のメッセージ
男は強くなければいけない。
昔は、今よりそんな空気が強かったように思います。
泣くな。
弱音を吐くな。
家族を守れ。
仕事をしろ。
多少つらくても我慢しろ。
私たちの世代には、どこかそんな感覚が残っている気がします。
でも61歳になって思うのは、
人間、ずっと強いままではいられないということです。
疲れる日はあります。
自信をなくす日もある。
何も考えたくない夜もある。
そんなとき、
「今日はダメだった」
と言える相手がいる。
そして相手が、
「そうなんだ」
と聞いてくれる。
解決策なんてなくてもいい。
私は、それだけでも随分違うと思います。
ただ、だからといって、
靴下を脱ぎっぱなしにして、
「安心できるから」
は違います(笑)。
それは自分で片づけましょう。
安心できることと、何でもやってもらうことは別です。
女性が男性に安心を求めてもいい。
男性が女性に安心を求めてもいい。
大切なのは、
どちらか一人だけが「安心を与える係」にならないこと。
恋人は母親でも父親でもありません。
大人同士です。
それでも、ときどき弱い自分を預けられる。
そんな相手がいることは、恋愛のかなり大きな魅力なのではないでしょうか。
