―― なぜ人は、越えてはいけない一線を越えてしまうのか ――
「不倫」という言葉には、
強い感情がまとわりつきます。
裏切り、嘘、罪悪感、破壊。
社会的にも、道徳的にも、
否定される行為であることは間違いありません。
それでも現実には、
多くの人が「不倫」という形の恋愛に足を踏み入れます。
なぜ人は、
リスクが高く、失うものも大きい関係に
引き寄せられてしまうのでしょうか。
この問いに向き合うため、
ここでは一度、
善悪の判断を脇に置き、
心と体で起きていることを整理していきます。
不倫は「異常な人」がするものではない
まず最初に、
誤解をひとつ解いておく必要があります。
不倫をする人は、
特別にだらしないわけでも、
理性が欠けているわけでもありません。
心理学的に見ると、
不倫は「性格の問題」よりも、
状況と心理の組み合わせによって起きることが多い行動です。
誰もが、
ある条件が重なれば、
その入り口に立ってしまう可能性を持っています。
不倫が「恋愛」として感じられてしまう理由
不倫が厄介なのは、
それが当事者にとって
「恋愛として成立してしまう」点です。
- ときめきがある
- 会いたい気持ちが抑えられない
- 相手のことを特別だと感じる
これらは、
通常の恋愛とまったく同じ感情です。
脳の中では、
「不倫」というラベルは存在せず、
ただ 恋愛反応 が起きているだけなのです。
脳科学から見る「不倫の高揚感」
恋愛状態に入ると、
脳内では次のような変化が起きます。
- ドーパミン(快感・期待)
- ノルアドレナリン(興奮・集中)
- フェニルエチルアミン(恋愛初期特有の高揚)
これらは、
「相手に強く惹きつけられる」状態を作り出します。
不倫の場合、
ここに 秘密性 と 背徳感 が加わります。
- 会えない時間
- バレてはいけない緊張感
- 限られた接触
これらは、
ドーパミン分泌をさらに強めます。
心理学的には、
制限が強いほど欲求が高まる
という性質が知られています。
不倫が「燃えやすい」のは、
この構造によるものです。
性欲は「性」だけの問題ではない
不倫を語るとき、
性欲の話は避けられません。
ただし、
ここでいう性欲は
単なる性的衝動ではありません。
中高年以降の不倫では、
性欲の正体が
次のような形で現れることがあります。
- 自分がまだ求められる存在であるという確認
- 男性・女性として見られる感覚
- 生きている実感
これは、
自己価値感と深く結びついた欲求です。
パートナーとの関係が
「生活」や「家族」中心になるほど、
この感覚は満たされにくくなります。
心理学的に見る「満たされなさ」
多くの不倫の背景には、
次のような心理状態があります。
- 大きな不満があるわけではない
- でも、どこか空虚
- 自分の気持ちを話せる相手がいない
この「はっきりしない欠如感」は、
日常の中では気づきにくいものです。
そこに現れるのが、
自分を強く肯定してくれる存在。
- 話を真剣に聞いてくれる
- 否定しない
- 特別扱いしてくれる
心理学では、
これは 情緒的報酬 と呼ばれます。
不倫は、
性欲だけでなく、
この情緒的報酬によって
強化されていきます。
なぜ「家庭がある人」ほど恋に落ちやすいのか
皮肉なことに、
安定した家庭を持つ人ほど、
恋愛の刺激に弱くなることがあります。
理由は単純です。
- 日常が予測可能
- 役割が固定されている
- 自分の一面が見えにくい
恋愛は、
「まだ知られていない自分」を
引き出してくれます。
不倫相手の前では、
- 親でも配偶者でもない
- 役割から自由
- ただの「一人の人間」
として扱われる。
この感覚は、
強い解放感を伴います。
不倫は「問題解決」ではない
ここで大切なことがあります。
不倫は、
満たされなさを一時的に感じにくくすることはあっても、
根本的な解決にはなりません。
- 家庭の問題
- 自己評価の低さ
- 人生の停滞感
これらは、
関係が続くほど
むしろ複雑になります。
それでも人が不倫をやめられないのは、
脳が「快」を学習してしまうからです。
不倫に入りやすいとき、人は「考える力」が弱っている
不倫に入る直前の多くの人は、
次のような状態にあります。
- 疲れている
- 孤独を感じている
- 自分の人生に迷っている
このとき人は、
長期的な結果よりも、
今の感情を和らげる選択をしやすくなります。
これは、
意志の弱さではありません。
脳の防衛反応です。
「なぜ惹かれたのか」を考えることに意味がある
不倫という恋愛を、
単に「間違い」と切り捨てると、
同じ構造は繰り返されます。
大切なのは、
- 何に惹かれたのか
- 何が満たされていなかったのか
- どんな自分でいたかったのか
を、
冷静に言葉にすることです。
これは、
不倫を肯定するためではなく、
自分を理解するためです。
▶ 不倫が終わったあと、人の心にどんな感情が残るのかについても整理しています
まとめ
不倫は、
衝動や欲望だけで起きるものではありません。
- 脳の報酬系
- 性欲と自己価値感
- 日常の中の静かな欠如
それらが重なったとき、
「恋愛」という形を取って現れます。
理解することは、
正当化することではありません。
ただ、
理解しなければ、
自分の人生の選択を
主体的に扱うことはできません。
この文章が、
誰かを裁くためではなく、
考えるための材料になれば幸いです。
