「年齢を重ねても自慰行為をしていて大丈夫なのか」
「むしろ、しないほうが健康にはいいのでは?」
自慰行為については、意外なほど人に聞けません。
若い頃ならまだしも、40代、50代、60代になると、「この歳になってまだしているのはおかしいのかな」と考える人もいるでしょう。
先に答えを言えば、自慰行為そのものは年齢に関係なく珍しいものではなく、適度であれば健康上問題になる行為ではありません。
医学的にも、自慰行為は一般的で自然な性的行動と考えられています。ストレスや緊張を和らげたり、眠りやすくなったり、自分の性的な反応を知ったりするきっかけになることもあります。
ただし、「健康にいいなら、たくさんすればするほどいい」という話でもありません。
大切なのは回数ではなく、自分の体や生活とのバランスです。
今回は、少し人には聞きにくい「自慰行為」について、大人の目線から考えてみたいと思います。
自慰行為は「異常な行為」ではない
まず、この部分から整理しておきましょう。
自慰行為は、自分自身の体を刺激して性的な快感を得る行為です。
男性だけのものでもありませんし、若い人だけのものでもありません。
パートナーがいる人でも自慰行為をすることがあります。
つまり、
「恋人がいないからする」
「夫婦生活がないからする」
という単純なものではないのです。
人間には性欲があります。
そして性欲の強さも、興奮するきっかけも、人によってかなり違います。
年齢とともに弱くなる人もいれば、50代、60代になってもあまり変わらない人もいます。
ですから、
「自分は人より多いのではないか」
「この年齢で性欲があるのは変なのではないか」
と必要以上に気にする必要はありません。
性欲があることと、その人の人格は別の話です。
私はこの区別は、大人になってからのほうが大切になるように思います。
自慰行為にはどんなメリットがあるのか
では、自慰行為には実際どのようなメリットが考えられるのでしょうか。
単純に「気持ちいい」だけではありません。
ストレスや緊張がやわらぐことがある
性的な興奮やオーガズムに伴い、脳や体にはさまざまな変化が起こります。
自慰行為のあと、
「なんとなく力が抜けた」
「気持ちが落ち着いた」
と感じた経験がある人もいるでしょう。
性的な快感やオーガズムに関連してドーパミンやオキシトシンなどが関与し、ストレスや緊張の軽減につながる場合があるとされています。
仕事で頭がいっぱいだったり、人間関係でイライラしていたりするとき、性的な欲求とは別に「緊張を解放したい」という気持ちが重なっている場合もあります。
ただし、ここには注意も必要です。
嫌なことがあるたびに自慰行為をして気持ちをごまかすようになると、今度は別の問題になってきます。
ストレス解消の方法のひとつくらいに考えておくのがいいでしょう。
眠りやすくなる人もいる
自慰行為のあとに眠くなる人は少なくありません。
オーガズム後に体の緊張が抜け、気持ちが落ち着くため、睡眠につながりやすくなる場合があります。自慰行為やオーガズムによる睡眠やストレスへの好影響は、医療機関の解説でも挙げられています。
私たちの年代になると、若い頃とは違った意味で眠れない夜があります。
仕事、お金、夫婦、親、子ども、これからの人生。
布団に入ってから考えなくてもいいことまで考えてしまう。
そんな夜に気持ちが切り替わるなら、それもひとつの作用でしょう。
もちろん不眠症そのものを治療する方法ではありません。
「自慰行為をすれば睡眠の質が必ず上がる」とまで考える必要もありません。
眠りやすくなる人もいる、その程度に考えてください。
自分の体を知ることができる
私は、このメリットは意外と大きいと思っています。
自慰行為をすると、
- どこに触れると心地よいのか
- どのくらいの強さが好きなのか
- どのくらい時間をかけると興奮するのか
- どんな気分のときに性欲が高まるのか
- 逆に、どんなときには性的な気分になれないのか
といった、自分自身の性的な特徴が見えてきます。
これは単なる「テクニック」の話ではありません。
自分の体との対話です。
実はパートナーとのセックスで、
「どうしてほしいかわからない」
という人は珍しくありません。
相手に伝えられない以前に、自分自身が自分の快感をよくわかっていないこともあるのです。
自慰行為によって自分の性的反応を知ることは、パートナーとの性生活を理解するうえでも意味があります。
これは男性にも女性にも言えることだと思います。
パートナーがいても自慰行為をしていい
ここは、夫婦関係を考えるうえでも大事なところです。
「夫がオナニーしている。私では満足できないの?」
「妻が一人でしている。自分とのセックスではダメなのか?」
こう考えてしまうことがあります。
でも、必ずしもそうではありません。
パートナーとのセックスと自慰行為は、同じ欲求を満たす行為とは限らないからです。
二人でするセックスには、
愛情、触れ合い、安心感、相手への気遣い、興奮、コミュニケーションなど、いろいろなものが入っています。
一方、自慰行為は基本的に自分一人です。
今日は少しだけ。
短時間で。
眠る前に。
そんな自由があります。
食事にたとえるのは少し変かもしれませんが、家族との夕食が好きだからといって、一人でラーメンを食べたくならないわけではありません。
それに近い部分もあるのではないでしょうか。
ですから、パートナーの自慰行為を知ったからといって、
「自分に魅力がない」
と直結させる必要はないの
性欲を自分で扱えるというメリット
性欲というのは、少し不思議な欲求です。
お腹が空けば「食べたい」と言えます。
眠ければ「眠い」と言えます。
ところが、
「性欲があります」
とは、なかなか言えません。
まして夫婦間で性欲に差があれば、
「したい側」と「したくない側」
に分かれてしまいます。
そこで、すべての性的欲求をパートナーに満たしてもらおうとすると、関係が苦しくなることがあります。
相手が疲れている。
体調が悪い。
そもそも今日はその気になれない。
そんな日も当然あります。
自慰行為は、性的な欲求の一部を自分自身で扱う方法にもなります。
これは意外と大切です。
パートナーを愛していることと、性欲をすべてパートナーに背負わせることは同じではありません。
大人の関係では、こうした「自分で扱える部分」を持つことも、二人の距離を守ってくれるのではないでしょうか。
「何回までなら正常?」という疑問
検索している人が一番気になるのは、ここかもしれません。
「週に何回なら正常なのか」
「毎日するとやりすぎなのか」
結論から言えば、一律に何回までという基準はありません。
毎日する人もいれば、月に数回の人もいます。
ほとんどしない人もいます。
性欲にはかなり個人差があります。
男性の場合、頻繁な自慰行為が男性不妊を直接引き起こすとは考えにくく、正常な精子の状態であれば、毎日の射精でも精子濃度や運動性が維持されることを示す研究があるとMayo Clinicは説明しています。
つまり、「回数が多い=体に悪い」と単純には言えません。
見るべきなのは回数よりも、
その行為によって困っているかどうか
です。
では「やりすぎ」とはどんな状態なのか
たとえば、
- 仕事や家事より自慰行為を優先してしまう
- 約束や予定をキャンセルしてまで行う
- 睡眠時間を削ってしまう
- 性器に痛みや擦り傷があるのに続けてしまう
- やめたいと思っているのにやめられない
- 強い罪悪感で苦しくなる
- パートナーとの関係に大きな支障が出ている
こうなってくると、回数ではなく「生活への影響」を考える必要があります。
強すぎる刺激や短時間に繰り返す自慰行為では、皮膚の擦れや一時的な痛みなどが起こることもあります。また、自慰行為が仕事や予定、責任を妨げるほどコントロールできなくなっている場合は、専門家への相談が選択肢になります。
「週○回だからアウト」なのではありません。
自分で選んでいるのか、それとも行為に引っ張られているのか。
ここがひとつの境目なのだと思います。
強すぎる刺激には少し注意したい
もうひとつ、大人になってから意識しておきたいのが刺激の強さです。
自慰行為では、自分の好きな刺激を自由に作れます。
そのため、非常に強い圧力や速い刺激など、パートナーとのセックスでは再現しにくい方法に慣れる人もいます。
それ自体がただちに病気になるという話ではありません。
ただ、
「以前より刺激を強くしないと満足できない」
「自慰行為では問題ないのにパートナーとのセックスでは感じにくい」
という変化を感じるなら、一度刺激の方法や強さを変えてみてもいいでしょう。
快感は、「強ければ強いほどいい」というものでもないようです。
体は案外、正直です。
50代・60代になっても自慰行為をしていいのか
もちろん、年齢だけを理由にやめる必要はありません。
年齢を重ねても性的な欲求がある人はいますし、自慰行為をする高齢者もいます。自慰行為は若者だけの行動ではありません。
むしろ私は、年齢を重ねてからこそ、性を「誰かに見せるもの」ではなく「自分の体の一部」として考えてもいいのではないかと思います。
若い頃は、
何回できるか。
勃起するか。
オーガズムに達するか。
相手を満足させられるか。
そんなことを気にします。
でも年齢を重ねると、少し見方が変わってきます。
自分の体は今どう感じるのか。
何が心地いいのか。
性欲は以前とどう変わったのか。
そうやって自分の体を知っていく。
自慰行為も、そのひとつの方法なのだと思います。
「しない」という選択も当然ある
ここまで自慰行為のメリットを書いてきましたが、ひとつ誤解してほしくないことがあります。
自慰行為をしなければ健康に悪い、ということでもありません。
性欲がほとんどない人もいます。
自慰行為に興味がない人もいます。
パートナーとのセックスだけで満足している人もいるでしょう。
それも普通です。
「自慰行為は健康にいいらしいから、しなければ」
と義務にする必要はまったくありません。
性というのは、人と比べ始めると急に苦しくなります。
多い、少ない。
する、しない。
感じる、感じない。
どちらが正しいという話ではありません。
自慰行為は「自分の性」と付き合う方法のひとつ
自慰行為について調べている人の中には、
「自分はおかしいのではないか」
という不安を持っている人もいると思います。
でも、性欲があること自体を恥ずかしがる必要はありません。
自慰行為そのものも、一般的で自然な性的行動です。
ただし、
「健康にいいからたくさんしよう」
というものでもありません。
ストレスがやわらぐ。
眠りやすくなる。
自分の体を知る。
性的な欲求を自分で扱える。
パートナーとの性について考えるきっかけになる。
そうしたメリットがある一方で、大事なのはあくまで自分の生活と体とのバランスです。
そして61歳になった今、性について思うのは、
若い頃のように「できる・できない」だけで考えなくてもいいのではないか、ということです。
性欲も快感も、自分の体の一部です。
無理に否定する必要もなければ、振り回される必要もありません。
ちょうどいい距離を探しながら付き合っていく。
自慰行為もまた、そんな「自分の体との付き合い方」のひとつなのではないでしょうか。
性欲は年齢とともに消えていくとは限りません。
そして、夫婦やパートナーとの性もまた、年齢とともに形を変えていきます。
