第3部「守ってあげたい」は恋愛感情なのか|母性本能と「好き」の違い

「この人のこと、放っておけない」

そんな男性がいる。

仕事で疲れていると心配になる。

落ち込んでいると話を聞いてあげたくなる。

ちゃんと食べているのかな、と気になる。

体調が悪いと聞けば、

「大丈夫?」

と連絡したくなる。

そして、ふと思う。

「私、この人のことが好きなのかな」

恋愛では、こんな瞬間があります。

「守ってあげたいと思うのだから、きっと好きなんだ」

そう考えることもあるでしょう。

でも、少し待ってください。

人を心配することと、その人に恋をすることは同じなのでしょうか。

最初に答えると、

「守ってあげたい」という気持ちは恋愛感情の一部になることがありますが、それだけで「好き」とは言い切れません。

人を助けたい。

心配だからそばにいたい。

かわいいと思う。

必要とされると嬉しい。

恋人になりたい。

触れたい。

他の人には渡したくない。

これらは似ているようで、少しずつ違う感情です。

しかも厄介なことに、人間はそれを同時に感じます。

だから、

「母性なのか、恋なのかわからない」

という状態が生まれるのです。

※この記事は「母性本能シリーズ」全15部の第3部です。
第1部「母性本能とは何なのか|女性には本当に生まれつき備わっているのか」では、恋愛の中で私たちが「母性本能」と呼んでいる感情の正体から考えています。


目次

「心配になる」と「好きになる」は同じではない

たとえば、職場に少し危なっかしい人がいるとします。

仕事は一生懸命。

でも無理をする。

昼食も食べずに働いている。

顔色も悪い。

そんな姿を見れば、

「ちゃんと食べなよ」

と言いたくなることがあります。

これは恋でしょうか。

もちろん、そうとは限りません。

友人でも同僚でも家族でも、人を心配することはあります。

つまり、

誰かを気にかける力そのものは、恋愛だけに使われる感情ではない

ということです。

ところが相手が好きな男性になると、話が少し変わります。

「今日はちゃんと食べたかな」

だけだったものが、

「誰と食べているんだろう」

になったりする。

心配に、別の感情が混ざってくるんですね。


「守りたい」より「近くにいたい」が強くなってくる

母性的な気持ちと恋愛感情を考えるとき、一つの目安になるのが、

相手が元気なときにも会いたいか

だと思います。

困っているときだけ気になる。

落ち込んでいるときだけ助けたくなる。

相談されたときだけ一生懸命になる。

これは「ケアしたい」という気持ちが強いのかもしれません。

一方で、

何も困っていなくても会いたい。

元気なときにも話したい。

くだらないことで笑いたい。

一緒に食事をしたい。

どこかへ出かけたい。

ただ隣にいたい。

そうなってくると、

「守る」という目的がなくても相手を求めています。

私はここに、恋愛との違いが少し見えると思います。

助ける理由がなくなっても、その人のそばにいたいのか。

これは案外、大きな問いです。


相手が幸せになれば、それで満足できるだろうか

もう一つ考えてみます。

あなたが心配している男性が元気になった。

仕事もうまくいった。

生活も安定した。

もう自分が助けなくても大丈夫そうです。

「よかった」

と思うでしょう。

では、その隣に別の女性がいたら?

ここで心が少しザワッとするかもしれません。

「元気になってよかった」

とは思う。

でも、

「その隣にいるのは私じゃないんだ」

と思うと寂しい。

これは、単純な「守ってあげたい」だけでは説明しにくくなります。

相手の幸せを願う気持ちと、

その幸せの中に自分もいたいという気持ち。

この二つは似ていますが違います。

恋愛では、後者が入ってくることがあります。


「私を頼ってほしい」は恋なのか

第2部でも少し触れましたが、ここはもう少し深く考えてみましょう。

好きな人から、

「ちょっと相談したいんだけど」

と言われる。

嬉しい。

頼られたことが嬉しい。

自分に話してくれたことも嬉しい。

では、その男性が、

「昨日、別の女性に相談して解決したよ」

と言ったらどうでしょう。

「ああ、よかった」

で終わる人もいるでしょう。

でも、

「なんで私じゃないの?」

とモヤッとする人もいます。

ここには、

助けたい。

だけではなく、

「特別な人でいたい」

という気持ちがあります。

恋愛には、この「特別」がよく出てきます。

誰でもいいから支えてあげたいのではなく、

私が支えたい。

誰でもいいから話を聞いてあげてほしいのではなく、

私に話してほしい。

この「私」が強くなってきたとき、母性的な気持ちと恋愛感情が重なり始めます。


ただし「必要とされたい」と「愛されたい」も同じではない

ここが、さらにややこしいところです。

相手から頼られる。

「君がいないと困る」

と言われる。

嬉しい。

それを、

「愛されている」

と感じることがあります。

でも、

必要とされることと、愛されることは同じではありません。

極端な話ですが、

料理をしてくれるから必要。

お金を貸してくれるから必要。

愚痴を聞いてくれるから必要。

困ったときに助けてくれるから必要。

それでも「必要な人」にはなれます。

でも、それが恋人として大切にされていることを意味するとは限りません。

この違いは、とても大切です。

「私がいないとこの人はダメだから」

と思っていたら、

実は相手が求めていたのは「私」ではなく、

私がしてくれること

だった。

これはつらいですよね。

だから、

「必要とされているから、愛されている」

とは一度分けて考えたほうがいいと思います。

「私がいないとこの人はダメ」と感じることで離れられなくなる関係については、第4部「なぜダメな男性ほど放っておけないのか|母性本能と恋愛依存の境界線」で、もう少し深く考えています。


母性本能から恋が始まることはある

では、

「守ってあげたい」

から始まった気持ちは恋愛ではないのでしょうか。

そんなこともありません。

最初は、

「危なっかしい人だな」

と思っていただけ。

相談に乗るようになる。

二人で話す時間が増える。

相手の考え方を知る。

意外な一面を見る。

一緒にいると楽しい。

気づいたら、相手からの連絡を待っている。

こうして恋愛感情へ変わっていくことは十分あります。

人を好きになる入口は、一つではありません。

一目惚れもある。

友人から始まる恋もある。

仕事仲間から始まることもある。

最初は苦手だったのに、いつの間にか好きになることもあります。

だったら、

「放っておけない」から始まる恋があっても不思議ではありません。

問題は、始まり方ではありません。

その後、二人の関係がどう変わっていくかです。


「かわいい」と「恋愛対象」は両立する

男性を「かわいい」と思った瞬間、

「私はこの人を男として見ていないのかな」

と不安になる女性もいるかもしれません。

でも、そうとも限りません。

頼もしい。

尊敬できる。

かわいい。

守りたい。

抱きしめたい。

触れたい。

性的に惹かれる。

これらは一人の相手の中で共存できます。

大人の恋愛では、むしろ珍しくないでしょう。

いつでも頼もしくて、いつでも色気があって、いつでも完璧。

そんな人が本当にいたら、それはそれで一緒に暮らすと疲れそうです(笑)。

好きな人がソファで寝落ちしている姿を見て、

「かわいいな」

と思う。

その数時間後には、異性として魅力を感じる。

別に矛盾していません。

人間を見る目は、一種類ではないからです。


「触れたい」と思うかどうかは一つの違いになる

母性と恋愛を分けるとき、

「性的に惹かれるか」

を考える人もいるでしょう。

確かに一つの手がかりにはなります。

手をつなぎたい。

抱きしめたい。

キスしたい。

SEXしたい。

そう感じるなら、単なる「世話をしたい」という感情だけではない可能性があります。

ただし、ここでも注意が必要です。

性的に求めないから恋愛ではない、とは言えません。

性欲には個人差があります。

その日の体調もある。

年齢でも変わる。

関係が長くなれば変化することもあります。

「好き」と「SEXしたい」は重なることがありますが、完全に同じものではありません。

これはKOKOROで何度も扱ってきたテーマですが、今回の母性本能シリーズでも重要になってきます。

後半では、

「守ってあげたい男性を、なぜ性的にも求めることがあるのか」

という、もう一段難しいところまで進みます。


「助ける自分」が好きになっていることもある

少し耳の痛い話もしておきます。

相手を好きなのではなく、

相手を助けている自分が好き

ということもあります。

頼られる自分。

必要とされる自分。

優しい自分。

相手を立ち直らせる自分。

そこに自分の価値を感じる。

もちろん、誰かの役に立てば嬉しいものです。

それ自体は悪いことではありません。

ただ、もし相手が自立した途端に興味が薄れたり、

自分を必要としなくなることが怖かったりするなら、

少し考えてみてもいいでしょう。

私はこの人そのものが好きなのか。

それとも、

「この人に必要とされる私」という関係が好きなのか。

ここを見分けるのは簡単ではありません。

でも、かなり大切です。


元気になった相手を好きでいられるか

母性本能と恋愛感情の違いを考えるために、こんな想像をしてみてください。

今あなたが気になっている男性が、

仕事で成功した。

自信を取り戻した。

生活も整った。

悩みも減った。

もうあなたに相談しなくても、一人でいろいろ決められる。

さて。

それでも会いたいでしょうか。

それでも一緒に笑いたいでしょうか。

それでも手をつなぎたいでしょうか。

それでも、

「この人と一緒にいたい」

と思うでしょうか。

もしそうなら、

あなたが好きなのは「弱っている彼」だけではないのでしょう。

元気な彼も好き。

これは、かなり重要です。


恋愛は「してあげる」だけでは続かない

恋愛の始まりでは、

「何かしてあげたい」

という気持ちは素敵です。

料理を作る。

話を聞く。

励ます。

支える。

でも、それだけが続くと疲れてきます。

恋人は、介護者でもカウンセラーでも保護者でもありません。

自分だって弱る日があります。

そのとき、

「今日は私の話も聞いて」

と言えるでしょうか。

そして相手は、

「どうした?」

とこちらを向いてくれるでしょうか。

私は、ここがかなり大事だと思います。

自分が弱くなったときにも成立する関係なのか。

いつも自分が守る側でなければ続かない関係なら、それは恋愛というより「役割」になってしまうことがあります。


母性本能と恋愛感情は、きれいに分けなくてもいい

ここまで、

母性なのか。

恋なのか。

と分けてきました。

でも最後には、少し逆のことも言っておきたいと思います。

無理にどちらか一つに決めなくてもいい。

人の感情は、

これは母性。

これは恋愛。

これは性欲。

これは寂しさ。

とラベルを貼って別々の箱に入っているわけではありません。

守りたいと思う。

かわいいと思う。

必要とされたい。

一緒にいたい。

触れたい。

嫉妬する。

安心する。

いろいろなものが混ざって、

「好き」

という感情になることがあります。

だから、

「これは母性本能だから恋ではない」

と切り捨てる必要もありません。

逆に、

「守ってあげたいから絶対に恋だ」

と決める必要もない。

大切なのは、名前よりも、

その人とどんな関係になりたいのか。

なのだと思います。


まとめ|「守ってあげたい」の先に何を望んでいるのか

「守ってあげたい」は恋愛感情なのでしょうか。

答えは、

恋愛感情になることもあります。でも、それだけでは恋とは言い切れません。

誰かを心配する。

助ける。

世話をする。

これは恋人以外にも向けられる感情です。

ただ、

元気なときにも会いたい。

自分を特別な存在として見てほしい。

相手の未来の中に自分もいたい。

触れたい。

自分が弱いときには相手にも支えてほしい。

そんな気持ちが重なってくると、

「守ってあげたい」は、かなり恋愛に近づいてきます。

もし自分の気持ちがわからなくなったら、

一つだけ考えてみてもいいでしょう。

「この人がもう私を必要としなくなっても、私はこの人と一緒にいたいだろうか」

この問いには、

母性本能と「好き」の違いを考えるヒントが隠れている気がします。

そして次の第4部では、もう少し危ういところへ進みます。

なぜダメな男性ほど放っておけないのか|母性本能と恋愛依存の境界線

「この人には私が必要」

その気持ちは愛情なのか。

それとも、その関係から自分も離れられなくなっているのか。

母性本能という言葉の陰に隠れやすい、**「必要とされることで離れられなくなる恋愛」**を考えます。

運営者のメッセージ

若いころなら、

「好きか、好きじゃないか」

恋愛はそのくらい単純に考えていたような気がします。

61歳になって考えると、「好き」の中にはずいぶんいろいろなものが入っています。

心配。

安心。

尊敬。

寂しさ。

性欲。

嫉妬。

必要とされたい気持ち。

そして、「この人を放っておけない」という感情。

どれが本当の愛情なのかと聞かれても、私は一つだけ選べません。

たぶん全部、人を好きになるときに入り込んでくるものなのでしょう。

ただ、

「あなたが必要」と「あなたを愛している」は、同じ言葉ではありません。

これは年齢を重ねるほど大事になる気がします。

何かをしてくれるから必要なのではなく、その人がそこにいること自体が嬉しい。

元気でも、弱っていても。

役に立っても、立たなくても。

一緒にいたい。

もしそんなところまで行けたなら、「母性なのか恋なのか」と名前をつける必要は、もうあまりないのかもしれません。

母性本能シリーズ

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第4部|なぜダメな男性ほど放っておけないのか|母性本能と恋愛依存の境界線

「私がいないと、この人はダメ」と感じる気持ちは愛情なのでしょうか。第4部では、必要とされたい心理と、母性本能・恋愛依存の境界線を考えます。

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