「男性の性欲は20代がピーク」
そんな話を聞いたことがある人は多いと思います。
確かに、男性ホルモンのテストステロンは若い成人期に高く、年齢とともに徐々に低下する傾向があります。
ただ、ここで注意したいことがあります。
テストステロンの量と「性欲の強さ」は、まったく同じものではありません。
20代でも性欲が弱い男性はいますし、50代、60代になっても恋愛や性的な関心が強い男性もいます。
性欲にはホルモンだけでなく、睡眠、健康状態、ストレス、パートナーとの関係、薬の影響など、さまざまな要因が関係しているからです。
では、男性の性欲に「ピーク」と呼べる年齢は本当にあるのでしょうか。
この記事では、男性の性欲が年齢とともにどう変化するのか、女性との違いも含めて考えていきます。
男性の性欲のピークは何歳なのか
先に結論から言うと、
「男性の性欲は○歳がピーク」と、一つの年齢で決めることはできません。
若い男性ではテストステロン値が比較的高いため、「男性の性欲は20代がピーク」と説明されることがあります。
しかし、これは「20代を過ぎたら性欲が急激に弱くなる」という意味ではありません。
米国国立老化研究所(NIA)の研究資料でも、男性では加齢に伴ってテストステロンや性欲などが低下していく傾向が示されています。
一方で、その変化は急激に起こるものではありません。
Mayo Clinicも、男性の性欲は加齢によって徐々に低下する傾向があるものの、その程度には個人差があり、多くの男性が60代、70代になっても性的関心を持っていると説明しています。
つまり、
身体的には若い時期が有利でも、実際に感じる性欲にはかなり大きな個人差がある。
これが実態に近いのだと思います。
参考:Mayo Clinic「Loss of sex drive in men」
テストステロンが高ければ性欲も強いのか
男性の性欲を考えるとき、よく登場するのがテストステロンです。
テストステロンは男性の身体に深く関係するホルモンで、性機能や筋肉量、骨などにも関係しています。
実際、テストステロンが著しく低下した男性では、性欲の低下が症状の一つとして現れることがあります。内分泌学会
ただし、
「テストステロンが高い=必ず性欲が強い」
という単純な関係ではありません。
これは意外と重要なところです。
性欲はホルモンだけで発生しているわけではないからです。
たとえば、
仕事で強いストレスを感じている。
毎日睡眠不足が続いている。
パートナーとの関係が悪化している。
気分が落ち込んでいる。
こうした状態では、年齢が若くても性欲が低下することがあります。
反対に、年齢を重ねても健康状態がよく、精神的にも安定していれば、性的な関心を持ち続けることがあります。
性欲というのは、思っている以上に「今の生活」を映しているのかもしれません。
20代の男性|身体的には性欲が高まりやすい時期
20代は身体的な活力が高く、男性ホルモンの状態から見ても性的関心が高まりやすい年代です。
恋愛経験もまだ新鮮で、新しい相手との出会いそのものが強い刺激になることがあります。
ただし、20代なら全員性欲が強いわけではありません。
「友人は恋愛やセックスの話ばかりしているのに、自分はそれほど興味がない」
そんな男性もいるでしょう。
それだけで異常ということではありません。
もともとの性欲にはかなり個人差があります。
30代の男性|仕事や家庭の影響が大きくなる
30代になると、男性の生活環境は大きく変わってきます。
仕事の責任が増えたり、結婚したり、子どもが生まれたりする人も多い年代です。
そのため、身体そのものより、
「疲れていてその気になれない」
ということが増えてきます。
睡眠不足、仕事のプレッシャー、育児、夫婦関係。
こうしたものが重なると、性欲どころではなくなることもあります。
少し話はそれますが、若い頃は「疲れていても遊べた」のに、いつの間にか「今日はもう寝よう」と思う日が増えてきます。
身体というのは正直なものです。
40代の男性|個人差が大きくなってくる
40代になると、性欲の個人差がより目立つようになります。
健康状態、運動習慣、睡眠、飲酒、ストレスなど、それまで積み重ねてきた生活習慣の影響も無視できません。
40代だから性欲がなくなるわけではありません。
むしろ、
「若い頃より相手との時間を楽しめるようになった」
という男性もいるでしょう。
一方で、仕事の責任や疲労が重なり、以前より性欲が弱くなったと感じる人もいます。
この年代からは「何歳だから」というより、どんな生活をしているかを見ることが大切になってきます。
50代の男性|性欲がなくなるとは限らない
50代になると、
「もう若くないから性欲が落ちるのは仕方ない」
と思ってしまう人もいます。
しかし、年齢だけで判断する必要はありません。
性欲は徐々に変化していくことがありますが、その程度にはかなり個人差があります。
また、若い頃とは「求めるもの」が変わってくる人もいます。
セックスそのものだけではなく、
一緒に過ごす時間。
会話。
触れ合い。
安心感。
そうしたものが以前より大切になることもあります。
これは性欲がなくなったというより、親密さの感じ方が変わってきたとも考えられます。
60代以降でも性欲は自然に存在する
私は61歳になりました。
この年代になると、「60代にもなって性欲があるのは変なのだろうか」と感じる人もいるようです。
しかし、そんなことはありません。
年齢を重ねても性的な関心を持つこと自体は自然なことです。
実際、Mayo Clinicも、多くの男性が60代や70代でも一定の性的関心を維持するとしています。Mayo Clinic
もちろん20代の頃と同じではありません。
身体の反応や回復力は変わります。
でも、「誰かに触れたい」「好きな人と親密になりたい」という気持ちまで、誕生日を境に突然消えてしまうわけではありません。
むしろ年齢を重ねることで、性欲と愛情、安心感が以前より近いところにあると感じる人もいるのではないでしょうか。
男性の性欲を左右するのは年齢だけではない
「最近、性欲が落ちた」
そう感じたとき、すぐに年齢のせいにしてしまうことがあります。
しかし、性欲にはほかにも多くの要因が関係しています。
代表的なのは、
- ストレス
- 睡眠不足や疲労
- 飲酒
- 心理状態
- 持病
- 一部の薬
- ホルモンの状態
- パートナーとの関係
などです。
Mayo Clinicも、男性の性欲低下にはストレス、疲労、飲酒、うつ状態、ホルモンや薬剤などが関係する場合があるとしています。Mayo Clinic
ですから、
「50代だから仕方ない」
「60代だから当然だ」
と最初から決めつける必要はありません。
急に性欲がなくなった場合は「年齢のせい」で済ませない
ここは少し大切なところです。
何年もかけて少しずつ性欲が変化してきたのであれば、加齢や生活環境の変化が関係している可能性があります。
しかし、
以前まで普通にあった性欲が急に大きく低下した場合
には、年齢以外の原因も考えた方がいいでしょう。
強いストレスや疲労、気分の落ち込み、病気、薬の影響、ホルモンの問題などが隠れていることがあります。
低テストステロンについても、症状だけで自己判断するものではありません。
Endocrine Societyの診療ガイドラインでは、男性性腺機能低下症の診断には症状だけでなく、適切に測定されたテストステロン値が継続して低いことを確認する必要があるとしています。内分泌学会
急激な変化や強い不安がある場合は、泌尿器科などで相談する選択肢もあります。
男性と女性では性欲のピークが違うのか
ここもよく検索されるテーマです。
「男性は20代、女性は30代や40代が性欲のピーク」
という話を見かけることがあります。
ただ、これも単純に年齢だけで分けるのは難しいでしょう。
女性の場合もホルモンだけではなく、恋愛経験、パートナーとの関係、妊娠・出産、更年期、心理的な安心感など多くの要素が関係します。
したがって、
男性=20代、女性=30代
と固定的に考えるより、それぞれ異なる身体的・心理的要因が性欲に影響していると考えた方が自然です。
ここについては別の記事で詳しく書いています。
→ 「男性と女性で性欲が違うのはなぜ?|脳・ホルモン・心理学から本当の理由を解説」
また、女性側の年齢による変化については、
→ 「女性の性欲はなぜ30代から強くなると言われるのか|身体・脳・心理から考える」
もあわせて読んでみてください。
※ここには現在の関連記事のURLを設定してください。
夫婦で性欲の強さが違うのは珍しいことではない
男性の性欲について調べている人の中には、
「自分は求めたいのに妻は求めてくれない」
あるいは逆に、
「夫の性欲が以前より弱くなった」
という悩みを抱えている人もいると思います。
でも、二人の性欲がいつも同じ強さになることの方が難しいのかもしれません。
仕事が忙しい時期も違います。
体調も違います。
ホルモンの変化も違います。
そして、相手に求める親密さの形も違います。
そのズレを、
「愛されていない」
「自分に魅力がなくなった」
と結びつけてしまうと、問題がさらに大きくなることがあります。
性欲の差については、
→ 「男女の性欲のギャップはなぜ起こるのか|心理学で読み解くすれ違いの理由」
で詳しく考えています。
性欲と恋愛感情は同じではない
もう一つ覚えておきたいのが、
性欲が強い=愛情が深い
ではないということです。
反対に、
性欲が弱い=愛情がなくなった
とも限りません。
恋愛感情と性的欲求は重なる部分がありますが、完全に同じものではありません。
長く一緒にいる夫婦では、恋愛初期のような強い刺激が落ち着いても、信頼や安心感が深まっていることがあります。
この違いを理解しておくと、パートナーの性欲が変化したときの受け止め方も少し変わってくると思います。
→ 「恋愛と性欲は別物なのか|脳科学と心理学から考える」
61歳になって思う「性欲のピーク」
若い頃の私なら、
「性欲のピークはいつ?」
と聞かれれば、単純に身体の勢いで考えていたと思います。
20代の頃は体力があります。
回復も早い。
恋愛も刺激的です。
でも61歳になってみると、少し違って見えます。
若い頃の性欲と、今感じる親密さは、同じ物差しでは測れないような気がするのです。
若い頃には「求めること」が大きかった。
今は、
一緒に笑えること。
何でもない話ができること。
そばにいて落ち着けること。
そして、触れ合いたいと思えること。
そうしたものが全部つながっているように感じます。
もちろん、これは私自身の感覚です。
60代でも性欲が非常に強い人もいれば、ほとんど感じない人もいるでしょう。
どちらが正しいという話ではありません。
性欲は競争ではないのですから。
男性の性欲は「何歳がピークか」だけでは語れない
男性の性欲について、「○歳がピーク」と一つの数字で答えるのは難しいと思います。
若い成人期にはテストステロン値が高く、身体的にも性的活動をしやすい条件がそろっています。
その意味では、若い時期を身体的なピークと考えることには一定の理由があります。
しかし、実際の性欲はホルモンだけでは決まりません。
睡眠。
健康。
ストレス。
仕事。
恋愛。
夫婦関係。
そして、その人自身の価値観。
さまざまなものが重なって、「今の性欲」がつくられています。
だから私は、
「もうピークを過ぎた」
と年齢だけで考える必要はないと思っています。
20代には20代の性欲があります。
40代には40代の親密さがあります。
そして60代には、60代だからこそ分かる人との距離があります。
年齢によって性欲の形が変わることはあっても、誰かを好きになることや、触れたいと思う気持ちに「何歳まで」という期限があるわけではありません。
自分の身体と心が今どう感じているのか。
それを誰かと比べずに受け止めること。
それが、大人になってからの性欲との付き合い方なのではないでしょうか。
運営者からのメッセージ
このブログでは、性欲を「強い・弱い」だけで判断しないようにしています。
性の悩みは、人と比べ始めると苦しくなります。
「普通はどのくらいなのだろう」
「この年齢で性欲があるのはおかしいのだろうか」
「以前より減った自分は老けたのだろうか」
私自身、61歳になって思うのは、身体も心も変わって当然だということです。
大切なのは若い頃に戻ることではなく、今の自分の身体と気持ちを知ることなのだと思います。
この記事が、自分の性欲や年齢について少し肩の力を抜いて考えるきっかけになればうれしく思います。
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参考資料
Mayo Clinic|Loss of sex drive in men: Natural with aging?
National Institute on Aging|Testosterone Trials
Endocrine Society|Testosterone Therapy for Hypogonadism Guideline Resources
