「この人とは、なんか合う」
理由を聞かれるとうまく説明できないのに、そう感じる相手っていますよね。
話しやすい。
沈黙していても妙に気まずくない。
近くにいても疲れない。
逆に、見た目も好みで性格も悪くない。条件だけなら申し分ないのに、一緒にいると少しずつ疲れてしまう人もいます。
では、この「相性がいい」という感覚は、いったい何なのでしょう。
自分は、単純に性格が似ているからではないと思っています。
相性がいいと感じる相手とは、自分が無意識に相手を警戒しなくていい人なのではないでしょうか。
会話のテンポ、表情、声、距離感、匂い、触れたときの感覚。そして、「この人なら自分を否定しないだろう」という安心感。
そういう小さな情報を、頭で考えるより先に体が受け取っている。
だから私たちは説明できないまま、
「なんか、この人とは合う」
と感じるのかもしれません。
61歳になった今振り返ると、強烈に惹かれた人と、本当に相性が良かった人は必ずしも同じではありませんでした。
若い頃は、そこをずいぶん勘違いしていた気がします。
今回は「相性がいいと感じるのはなぜか」を、心理と身体の両方から考えてみたいと思います。
相性がいい相手とは、自分を演じなくていい相手
自分が一番大きいと思うのは、これです。
相性がいい相手の前では、必要以上に自分を作らなくていい。
恋愛の始まりって、どうしても少し格好をつけますよね。
面白い人だと思われたい。
頼れる男に見られたい。
嫌われるようなことは言いたくない。
自分も若い頃はかなりやっていたと思います。
相手が好きな音楽を聞けば、自分も興味があるような顔をする。
本当は疲れているのに、
「全然大丈夫」
なんて言ってしまう。
今考えると、恋愛なのに妙に仕事をしているんですよね。
ところが、本当に相性がいいと感じた相手とは少し違いました。
話題がなくなっても焦らない。
変なことを言ってしまっても、「まあいいか」と思える。
コンビニまで一緒に歩くだけなのに妙に楽しい。
別に何か特別なことが起きているわけではありません。
むしろ、何も起きていない時間が心地いい。
これは長く付き合う相手を考えると、かなり大切なことだと思います。
人は、相手の前で自分を演じている間、少なからず緊張しています。
「こんなことを言ったら嫌われるかな」
「機嫌を損ねないかな」
そんなことをずっと考えていたら、どれだけ好きでも疲れます。
反対に、
「多少変なことを言っても、この人なら大丈夫だろう」
と思える相手の前では、警戒が少し下がります。
その感覚を、私たちは「居心地がいい」「相性がいい」と呼んでいる部分があるのでしょう。
だから相性は、好きなものが同じかどうかだけではわからないんですよね。
趣味が違っても、一緒にいてラクな人はいます。
逆に趣味も価値観も似ているのに、なぜか疲れる人もいる。
プロフィールを並べただけでは見えてこないのが、恋愛の面白いところです。
男女の恋愛心理の違い|なぜ男性と女性はすれ違うのか心理学で解説
会話のテンポと「間」が合う人は、一緒にいて疲れにくい
相性を考えるとき、自分は会話の内容より「テンポ」のほうが意外と大きいと思っています。
話す速さ。
返事をするまでの間。
笑うタイミング。
相手が話し終わるまで待てるか。
沈黙をどれくらい平気でいられるか。
こういうものです。
たとえば、自分は少し考えてから話したいのに、相手が次々に質問してくる。
相手に悪気はありません。
でも毎回それが続けば、少し疲れてしまいます。
反対に、自分が話したいタイプなのに、相手からほとんど反応が返ってこなければ、
「この人、自分の話に興味ないのかな」
と不安になるでしょう。
どちらが正しいということではありません。
テンポが違うんです。
LINEでも同じですね。
毎日何度も連絡を取りたい人がいる。
一日に一度くらいで十分な人もいる。
三日くらい連絡がなくても平気という人もいるでしょう。
この二人が付き合うと、
片方は「愛されていない」と感じ、
もう片方は「束縛されている」と感じる。
実際には愛情の問題ではないのに、距離感が違うだけで関係が苦しくなることがあります。
若い頃の自分は、
「好きなら合わせられる」
と思っていました。
でも、これを何年も続けるのは結構大変です。
もちろん恋愛には歩み寄りが必要です。
何もかも同じ人なんていません。
ただ、最初からある程度テンポが近い二人は、そのために使うエネルギーが少なくて済みます。
頑張って合わせなくても、自然と間が合う。
これも「相性がいい」の正体の一つなのだと思います。
「何をするかわかる人」に私たちは安心する
もう一つ、相性を考えるうえで大きいのが、相手の反応をある程度予測できることです。
これは少し地味ですが、長い関係ではかなり重要です。
昨日は優しかったのに、今日は理由もなく冷たい。
同じことを言っても、ある日は笑うのに、ある日は激怒する。
突然連絡が途絶える。
約束が頻繁に変わる。
こういう相手と一緒にいると、人は自然と相手の顔色を見るようになります。
「今日は大丈夫かな」
「これを言ったら怒るかな」
好きであっても、心は休まりません。
反対に、
嫌なことは嫌と言ってくれる。
怒っていても突然人格まで否定してこない。
約束したことはだいたい守る。
そういう人は、次に何が起こるかをある程度予測できます。
すると安心するんですよね。
恋愛というと、ときめきとか刺激の話ばかりになりがちですが、長く付き合っていくなら、この「予測できる」という感覚はかなり大切だと思います。
少し話はそれますが、若い頃は「何を考えているかわからない人」に惹かれることがありました。
ミステリアスで魅力的に見えるんです。
でも付き合い始めると、そのミステリアスがそのまま不安になることもある。
面白いものです。
遠くから見て魅力的な人と、隣で暮らして心地いい人は違う場合があります。
本能的な「なんか好き」には、体の感覚も関係している
ここから少し身体の話です。
恋愛では、
「匂いが好き」
という話をよく聞きます。
香水のことではありません。
その人自身の匂いです。
これをすべて「遺伝子的な相性」で説明するような話もありますが、そこまで単純に断定するのは難しいと思います。
ただ、人が相手を心地よいと感じるとき、視覚だけを使っているわけではありません。
声の高さや話し方。
表情。
体温。
匂い。
近づかれたときの距離。
触れられたときに落ち着くか、それとも少し身構えるか。
いろいろな感覚を使っています。
だから、頭では、
「この人、すごくいい人なんだけどな」
と思っているのに、身体のほうがなぜか落ち着かないことがあります。
反対に、理由らしい理由が見当たらないのに、そばにいるだけで安心する人もいる。
これをすべて「本能」の一言で片づけるのは乱暴でしょう。
でも、人間が頭だけで恋愛していないことは確かだと思います。
自分も振り返ると、条件だけ見れば申し分ないのに、なぜかずっと緊張していた相手がいました。
嫌いではない。
むしろ魅力的でした。
でも、会ったあとに妙に疲れている。
逆に、本当に相性が良かった人とは、会ったあともそれほど疲れない。
昔はそんなことを意識していませんでした。
今なら、
「体が出している反応も、少しは見たほうがよかったな」
と思います。
価値観が同じより「違ったときにどうなるか」が大事
「相性がいい人=価値観が同じ人」
と思われがちです。
もちろん、金銭感覚や生活リズム、恋愛観などが近ければ、衝突は少なくなるでしょう。
でも、全部同じである必要はないと思います。
問題は、違いが見つかったときです。
たとえば旅行。
一人は朝早くから予定を詰め込みたい。
もう一人はホテルでゆっくりしたい。
これは価値観が違います。
でも、
「じゃあ午前中は別々にして午後から一緒に行こうか」
と話せる二人なら、それほど大きな問題にはならない。
ところが、
「普通は朝から動くだろ」
「なんで旅行まであなたに合わせなきゃいけないの」
となれば、同じ違いでも関係は苦しくなります。
だから相性を見るなら、
意見が同じかより、違ったときに安心して話せるか。
こちらのほうが大切なのかもしれません。
恋愛の最初は、お互い似ているところを探します。
「あ、それ自分も好き」
「わかる、わかる」
あの時期は楽しいですよね。
でも長く付き合えば、必ず違いが出てきます。
そのとき初めて、本当の意味での相性が見えてくる。
自分はそんな気がしています。
強烈なドキドキと「相性がいい」は同じではない
若い頃の自分が一番勘違いしていたのが、ここです。
ものすごくドキドキする。
会いたくて仕方がない。
LINEが来ないと落ち着かない。
それくらい相手に夢中になると、
「この人こそ運命の人だ」
と思います。
確かに、強く惹かれていることは間違いありません。
でも、強く惹かれることと相性がいいことは、必ずしも同じではないんですよね。
会えば最高に楽しい。
でも、会っていない間はずっと不安。
相手の一言で天国にも地獄にもなる。
それは恋愛として非常に強烈です。
思い出にも残ります。
ただ、長く続けるにはかなりエネルギーを使います。
反対に、本当に安心できる人との恋愛は、最初は少し物足りなく感じることさえあります。
刺激が少ないからです。
「これって本当に好きなのかな」
なんて思うこともある。
ところが半年、一年と一緒にいるうちに、その安心感の価値がわかってくる。
何かあったとき一番に話したくなる。
黙って隣にいてもらえるだけでいい。
そういう関係です。
ドキドキは悪いものではありません。
自分だって恋愛するなら、多少はドキドキしたいです。
でも、
ドキドキする人=相性がいい人
と決めてしまわないほうがいい。
これは年齢を重ねて、かなり強く思うようになりました。
相手の気持ちがわからないときに起きている心理とは|不安・男女差・恋愛の本質を解説
「相性がいい」は、一緒にいる二人の間で作られていく
ここまで書いてきましたが、相性にはもう一つ面白いところがあります。
最初から全部決まっているわけではないということです。
会話のテンポが少し違っても、お互いがわかってくれば合ってくることがあります。
連絡頻度が違っても、
「この人は返信が遅いけど、気持ちがないわけではない」
とわかれば、不安は減ります。
最初は遠慮していた二人が、少しずつ本音を言えるようになる。
そうすると以前より一緒にいてラクになる。
つまり相性には、
「最初から合っている部分」
と、
「関係の中で合っていく部分」
の両方があるんじゃないでしょうか。
これは結構大事だと思います。
相性占いのように、
「あなたたちは相性87%です」
で決まるものではない。
人間同士ですからね。
二人で作っていく部分もあります。
逆に、最初は最高に相性がいいと思っていても、相手を雑に扱い始めれば居心地は悪くなります。
安心感は一度手に入れたら永久に続くものでもありません。
約束を守る。
相手の話を聞く。
違いを否定しない。
嫌なことはきちんと伝える。
そんな普通のことの積み重ねで、「この人といると安心する」という感覚も育っていくのだと思います。
まとめ|「なんか合う」の正体は、心と体が警戒しなくていいこと
相性がいい相手とはどんな人なのか。
自分なりに考えてみると、
性格が似ている人でも、
趣味が同じ人でも、
理想の条件を全部満たしている人でもありませんでした。
一番近いのは、
「自分の心と体が、必要以上に警戒しなくていい相手」
なのだと思います。
無理に話さなくてもいい。
少しくらい格好悪い自分を見せてもいい。
沈黙してもいい。
意見が違っても、関係が壊れると思わなくていい。
そして一緒にいると、なぜか肩の力が抜ける。
そういう相手です。
若い頃の自分は、恋愛とはもっと激しいものだと思っていました。
追いかけて、悩んで、嫉妬して。
苦しいほど好きなのが本物の恋愛だと思っていたところもあります。
でも61歳になった今なら、少し違う見方をします。
もちろんドキドキもいい。
性欲や魅力があることも、男女の関係では大切でしょう。
でも、それとは別に、
「この人の隣なら普通の自分でいられる」
という感覚がある。
長く一緒にいる相手を考えたとき、これはかなり大きいと思います。
「なんか合う」
あの説明しにくい感覚は、単なる気のせいではないのかもしれません。
頭で条件を比べるよりずっと前に、心と体の両方が、
「この人なら大丈夫そうだ」
と感じ取っている。
相性とは、案外そんな静かな感覚なのではないでしょうか。
