それは愛か、それとも依存か
― 心の距離が近すぎる関係に起きていること
「この人がいないと、自分は成り立たない気がする」
「相手の機嫌ひとつで、一日の気分が決まってしまう」
こうした感覚を抱いたとき、多くの人はそれを愛情の深さだと解釈します。
しかし心理学の視点で見ると、それは必ずしも“愛”とは限りません。
■ 愛と依存の決定的な違い
愛は「相手がいても、いなくても、自分が自分でいられる状態」。
一方、依存は「相手がいないと、自分の価値や安心が保てない状態」です。
違いはとても静かで、日常の中では見分けがつきにくい。
なぜなら依存は、多くの場合優しさ・思いやり・責任感という顔をして現れるからです。
- 相手を心配しすぎてしまう
- 期待に応えられないと強い罪悪感を抱く
- 自分の感情より、相手の感情を優先する
これらは一見、美徳のように見えます。
しかし積み重なると、関係の中で心の距離が失われていく原因になります。
■ 心の距離が「近すぎる」と何が起きるのか
健全な関係には、物理的距離よりも心理的距離が重要です。
心理的距離とは、「相手の感情と自分の感情を区別できている状態」。
距離が近すぎると、
- 相手の不安=自分の不安
- 相手の怒り=自分への否定
- 相手の沈黙=自分の価値の低下
このように、感情の境界線が曖昧になります。
結果として、
「わかってもらえない」
「一緒にいるのに、なぜか苦しい」
という違和感が生まれ始めます。
■ なぜ大人の関係ほど依存が起きやすいのか
年齢を重ねるほど、人生の役割は増えていきます。
配偶者、親、仕事、老後、不安定な身体。
その中で「この人だけは失いたくない」という思いが強くなると、
無意識に相手を心の支え以上の存在にしてしまうことがあります。
それは弱さではありません。
むしろ、真剣に生きてきた人ほど陥りやすい状態です。
この第1部では、
「自分が悪いのではなく、構造として起きていること」
に気づくことがゴールです。
