はじめに|40代になって「したくない」と感じるのはおかしいことではない
「夫のことが嫌いになったわけではない。でも、セックスしたいと思えない」
40代になると、そんな自分の変化に戸惑う女性は少なくありません。
以前はそれほど気にならなかったのに、誘われると少し面倒に感じる。
触れられることさえ嫌に感じる日がある。
その一方で、
「このまま夫婦の関係が冷めてしまうのでは」
「私がおかしいのだろうか」
と不安になることもあります。
けれど、40代の「したくない」は、一つの理由だけで起きるものではありません。
更年期に向かう身体の変化。
仕事や家事、子育て、親のことなどによる疲労。
睡眠不足やストレス。
そして、長く一緒にいるパートナーとの関係。
こうしたものが少しずつ重なって、性欲や性的な反応に影響していることがあります。
この記事では、「40代女性がなぜセックスしたくなくなることがあるのか」を、身体・心理・生活・夫婦関係の4つの側面から考えていきます。
40代女性がセックスしたくない理由は一つではない
最初に大切なことをお伝えすると、
「40代になったから性欲がなくなる」と単純に決まっているわけではありません。
40代でも性欲が強い人はいますし、以前とほとんど変わらない人もいます。
逆に、30代から性的な関心が低下する人もいます。
つまり、年齢だけでは説明できません。
40代という年代では、身体と生活の両方に変化が起こりやすくなります。
たとえば、
- 更年期に向かうホルモン変化
- 疲労や睡眠不足
- 仕事のストレス
- 家事や子育て
- 親の介護
- 自分の身体への意識
- パートナーとの関係
- 性交時の痛みや不快感
などです。
しかも、これらは一つずつ独立しているわけではありません。
疲れているから気持ちが動かない。
気持ちが動かないのに求められる。
求められることが負担になる。
そして、さらに触れられたくなくなる。
そんな循環が生まれることもあります。
だからこそ「性欲がない」という結果だけを見るのではなく、その背景を考えることが大切なのだと思います。
更年期に向かう身体の変化も関係する
40代女性の性欲を考えるうえで無視できないのが、更年期に向かう身体の変化です。
一般に更年期は閉経の前後を含む時期を指し、その過程では女性ホルモンの状態が変化します。
ただし、その変化の現れ方にはかなり個人差があります。
「40歳になった瞬間に性欲が落ちる」というような単純なものではありません。
月経周期の変化だけでなく、
疲れやすい。
眠りが浅い。
気分が安定しない。
ほてりを感じる。
以前より身体の回復に時間がかかる。
こうした変化が重なることもあります。
身体が疲れているときに、性欲だけが以前と同じように働くとは限りません。
これは、本人の愛情や努力とは別の問題です。
女性の性欲が年齢によってどう変化するのかについては、
「女性の性欲はなぜ30代から強くなると言われるのか|身体・脳・心理から考える」でも詳しく考えています。
「性欲がない」のではなく、痛みや不快感を避けていることもある
ここはとても大切なところです。
本人は、
「最近セックスしたくなくなった」
と思っていても、その背景に性交時の乾燥や痛み、不快感が隠れていることがあります。
以前は気にならなかったのに、最近は痛い。
十分に潤うまで時間がかかる。
終わったあとに違和感が残る。
そうした経験が何度か続けば、身体は自然に「また痛いかもしれない」と警戒するようになります。
すると、セックスそのものを避けたくなることがあります。
これは「夫を嫌いになった」という話とはまったく違います。
身体が不快な経験を避けようとしている可能性があるからです。
潤滑剤などで負担が軽くなる場合もありますが、痛みが続く場合や出血など気になる症状がある場合は、我慢を続けず婦人科などの医療機関に相談することも大切です。
40代は、単純に疲れていることも多い
性欲について考えると、ついホルモンや夫婦関係ばかりに目が向きます。
でも、もっと単純な理由もあります。
疲れているのです。
40代は、仕事では責任が増える時期でもあります。
家庭では家事や子育てが続いているかもしれません。
さらに親の健康や介護が気になり始める人もいます。
朝から夜まで、誰かのために動いている。
ようやく一日が終わり、布団に入った。
そこでパートナーから求められても、
「今はもう寝たい」
となってしまう。
これは不思議なことではありません。
性欲は、身体や心にある程度の余裕があって初めて動きやすくなるものでもあります。
「したくない」という言葉の裏側に、
「もう今日は何もしたくない」
という疲労が隠れていることもあるのです。
「したくない」と「愛していない」は同じではない
夫婦ですれ違いやすいのが、ここです。
妻から断られた夫は、
「もう俺のことが好きではないのかな」
「男として見られていないのでは」
と考えてしまうことがあります。
一方、妻からすると、
「嫌いだから断っているわけじゃない」
ということがあります。
つまり、
愛情と性的な欲求は、必ずしも同じ動きをするわけではありません。
一緒にいたい。
大切な人だと思っている。
家族として必要としている。
でも今日はセックスしたくない。
この二つは両立します。
ここを「愛しているなら応じるはず」と考えてしまうと、夫婦の問題は性欲そのものより複雑になってしまいます。
男女で性欲の感じ方に違いが生まれる理由については、
「男女の性欲に違いはある?|男性と女性で差が生まれる科学的な理由」でも詳しく考えています。
「求められるだけ」の関係になると気持ちが離れることがある
身体だけでなく、夫婦関係そのものが性欲に影響することもあります。
長く一緒に暮らしていると、どうしても生活が中心になります。
仕事の話。
子どもの話。
お金の話。
親の話。
家事の話。
必要な会話はしているのに、二人自身について話す時間は減っていきます。
そんな状態で、寝室に入ったときだけ突然「夫婦」に戻ろうとしても、気持ちが追いつかないことがあります。
女性に限ったことではありませんが、日常の関係性と性的な親密さは完全に別物ではありません。
普段ほとんど会話がない。
自分の気持ちを聞いてもらえていない。
家事や育児の負担に不満がある。
その状態で性的な接触だけを求められると、
「なぜ、こういうときだけ?」
と感じる人がいても不思議ではありません。
「触られる=セックス」になると、触れ合いそのものを避けることもある
夫婦関係で意外に大きいのが、この問題です。
手をつなぐ。
肩に触れる。
抱きしめる。
隣に座る。
本来なら、こうした触れ合いには必ずしも性的な意味はありません。
ところが、
触れられると、そのまま必ずセックスを求められる
という経験が続くと、最初の触れ合い自体を避けるようになることがあります。
「抱きしめられるのも嫌になった」
という状態です。
これは、相手そのものを拒絶しているとは限りません。
その先にある「応じなければならない」というプレッシャーを避けている可能性があります。
だからこそ、夫婦の距離を戻したいときほど、セックスをゴールにしない触れ合いが大切になる場合があります。
性欲は最初から湧いてくるとは限らない
性欲というと、
「したいと思う → 誘う → セックスする」
という順番を想像しがちです。
でも、人の性的な欲求は必ずしもその順番だけではありません。
最初から強い欲求があるのではなく、
安心して話す。
一緒に過ごす。
優しく触れ合う。
気持ちが落ち着く。
そうした過程の中で、少しずつ性的な気持ちが生まれる人もいます。
ですから、
「自分からしたいと思わなくなった=性欲がなくなった」
とは限りません。
日常の余裕や関係性によって、欲求が動き出すまでに時間が必要になっていることもあります。
「察してほしい」だけでは伝わらないこともある
ここは少し厳しい話になるかもしれません。
「これくらい分かってほしい」
と思うことはあります。
長く一緒に暮らしている夫婦なら、なおさらです。
でも、何十年一緒に暮らしていても、相手の頭の中まで読めるようになるわけではありません。
少し話はそれますが、夫婦生活が長くなると「説明書はもう読んだ」という感覚になりがちです。
ところが、人間の説明書は年齢とともに書き換わります。
昔は平気だったことが、今はつらい。
以前はうれしかった触れ方が、今はそうでもない。
そんな変化は、言葉にしなければ相手には分からないことがあります。
「したくない」だけで終わらせず、
「最近とても疲れている」
「少し痛いことがある」
「もう少しゆっくり触れてほしい」
「今日は抱きしめてもらうだけがいい」
そんなふうに具体的に伝えられると、相手も理解しやすくなります。
夫側も「拒絶された」と決めつけないこと
これは男性側にも大切なことだと思います。
誘って断られると、やはり傷つきます。
何度も断られれば、
「もう自分には魅力がないのではないか」
と感じることもあるでしょう。
その気持ちまで否定する必要はありません。
ただ、そこで、
「もう愛されていない」
「浮気しているのでは」
「妻が冷たくなった」
と結論を急いでしまうと、本当の理由から遠ざかってしまいます。
疲れているのかもしれない。
身体に変化があるのかもしれない。
痛みがあるのかもしれない。
二人の関係に何か引っかかりがあるのかもしれない。
まずは理由を知ろうとすること。
それが、性の問題を夫婦の対立に変えないために必要なのではないでしょうか。
男性側の性欲や年齢による変化については、
「男性の性欲のピークは何歳なのか|女性との違いを心理学で解説」で詳しくまとめています。
夫婦の距離を縮めるためにできること
では、「したくない」という状態になったとき、どうすればよいのでしょうか。
私は、いきなりセックスを元に戻そうとしない方がいいと思っています。
まずは、セックスとは関係のないところからです。
一緒に食事をする。
少し散歩する。
スマートフォンを置いて話す。
手をつなぐ。
肩に触れる。
抱きしめる。
そして、それ以上を求めない。
「今日はここまででもいい」
と思える関係をつくることです。
性の問題を解決しようとすると、どうしても「何回するか」「どうすれば応じてくれるか」という話になりがちです。
でも、その前に必要なのは、
触れられても安心できること。
なのかもしれません。
痛みや急な変化は「年齢だから」で済ませない
40代だからといって、身体の変化をすべて更年期や加齢のせいにする必要はありません。
性交時の痛みが続く。
出血がある。
月経の変化が大きい。
強い不調が続いている。
気分の落ち込みや睡眠の問題が日常生活にも影響している。
こうした場合には、一人で我慢せず、婦人科などの医療機関に相談することも選択肢になります。
また、服用している薬や持病、精神的なストレスなどが性的な欲求に影響することもあります。
「もう40代だから仕方ない」
と決めつけないことも大切です。
40代の「したくない」は、関係を見直すきっかけにもなる
セックスしたくない。
触れられたくない。
以前とは違う。
そう感じると、どうしても悪い変化のように思えてしまいます。
でも、私は必ずしもそうではないと思っています。
40代は、若い頃と同じ身体でも、同じ生活でもありません。
当然、夫婦関係も変わります。
若い頃にうまくいっていた方法が、ずっと同じように通用するとは限りません。
だから、
「昔はこうだったのに」
ではなく、
「今の二人には何が心地いいのだろう」
と考えてみる。
それだけでも、見える景色は少し変わるのではないでしょうか。
まとめ|40代女性がセックスしたくない理由を一つに決めない
40代女性がセックスしたくないと感じる背景には、さまざまな理由があります。
更年期に向かう身体の変化。
乾燥や性交時の痛み。
疲労や睡眠不足。
仕事や家事、子育て、介護などの負担。
ストレス。
自分の身体に対する気持ち。
そして、パートナーとの関係。
どれか一つではなく、いくつもの要因が重なっていることもあります。
だから、
「性欲がなくなった」
「夫を愛していない」
「女として終わった」
と簡単に結論を出す必要はありません。
まずは、自分の身体と気持ちの中で何が変わったのかを見つめてみること。
そして夫婦であれば、相手を責めるのではなく、その変化について話してみること。
そこから始めても遅くありません。
運営者からのメッセージ
私は61歳になりました。
この年齢になると、若い頃には分からなかったことがたくさんあります。
その一つが、
人の心も身体も、ずっと同じではない
ということです。
若い頃は、好きなら触れたい、夫婦なら求め合うのが普通だと思っていた時期もありました。
でも長い人生の中では、仕事も変わります。
身体も変わります。
家族の状況も変わります。
当然、性欲だって変わります。
だから私は、セックスの回数だけで夫婦の愛情を測る必要はないと思っています。
ただし、何も話さなくていいという意味でもありません。
「最近どう?」
「疲れてない?」
「何か嫌なことある?」
そんな何気ない言葉から、相手の変化に気づくことがあります。
若い頃の二人に戻る必要はありません。
今の年齢だから作れる関係があっていい。
そして、触れることも、話すことも、ただ隣にいることも、夫婦の親密さの一部なのだと思います。
この記事を読んで、
「私だけがおかしいわけではないのかもしれない」
「妻の気持ちを少し聞いてみようかな」
そう思っていただけたなら、この記事を書いた意味があると思っています。
